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シナプス入力に伴う神経細胞小胞体内腔のCa2+動態可視化(J. Neurosci.)

Okubo, Y., Suzuki, J., Kanemaru, K., Nakamura, N., Shibata, T. and Iino, M.

Visualization of Ca2+ filling mechanisms upon synaptic inputs in the endoplasmic reticulum of cerebellar Purkinje cells.

J. Neurosci. 35(48):15837-15846, 2015 Abstract

This Week in The Journal に取り上げられました。Crick here

 

小胞体内腔Ca2+プローブG-CEPIA1erを用い、小脳プルキンエ細胞においてシナプス入力に伴う小胞体内腔のCa2+動態を初めて可視化することに成功しました。平行線維からのシナプス入力に伴いシナプス直下の小胞体ではCa2+が枯渇しますが、その後速やかに周囲からの拡散により補充されることが明らかとなりました。あたかも、小胞体はCa2+のパイプラインの様に振る舞います。また登上線維からのシナプス入力に対しては、細胞外から流入したCa2+が小胞体に蓄積され、シナプス入力の頻度のメモリーとして機能することが分かりました。

末梢神経髄鞘形成におけるカルシウムシグナル(Cell Rep.)

Daisuke Ino, Hiroshi Sagara, Junji Suzuki, Kazunori Kanemaru, Yohei Okubo and Masamitsu Iino

Neuronal Regulation of Schwann Cell Mitochondrial Ca2+ Signaling during Myelination

Cell Reports 2015 doi: 10.1016/j.celrep.2015.08.039 Article

 

感覚情報や運動情報を高速に伝えるためには、末梢神経に髄鞘が形成されることが重要です。髄鞘形成には細胞内エネルギー産生が重要な要素の一つとして考えられてきました。今回、その機構として、軸索の活動に依存したシュワン細胞内のCa2+濃度上昇の関与を明らかにしました。すなわち、軸索の活動に伴いATPが細胞外に放出され、それがATP受容体を介してシュワン細胞内Ca2+濃度を上昇させ、これがミトコンドリア内腔に到達して代謝を活性化させる一連のシグナル伝達機構が明らかになりました。この成果は、髄鞘形成の異常を伴う疾患の理解にも貢献すると期待されます。

アストロサイト内の微小なCa2+活動をも見逃さない新しい生体内イメージング技術(Cell Rep.)

Kanemaru, K., Sekiya, K., Xu, M., Satoh, K., Kitajima, N., Yoshida, K., Okubo, Y., Sasaki, T., Moritoh, S., Hasuwa, H., Mimura, M., Horikawa, K., Matsui, K., Nagai, T., Iino, M., Tanaka, K.F.

In vivo visualization of subtle, transient and local activity of astrocytes using an ultrasensitive Ca2+ indicator

Cell Reports 2014 doi: 10.1016/j.celrep.2014.05.056. Abstract

 

超高感度Ca2+センサーをアストロサイトに導入した遺伝子改変マウスを作製し、これまで捉えることが困難であったグリア細胞の微細な突起を含む細胞全体のCa2+シグナルを、生きたマウスの脳内で鮮明に可視化できるようになりました。本イメージング法により、アストロサイトの微細な突起に限局して発生するCa2+シグナル(Ca2+ twinkle)を発見しました。

グリア細胞のCa2+シグナルをこれまでになく詳細に解析できる本法は、脳の様々な生理・病態生理機能に重要であることが示唆されているアストロサイトの機能解明に画期的な貢献をすると期待されます。

細胞内小器官内腔のCa2+濃度測定を可能とするCEPIAインジケーターの開発(Nat. Commun.)

Junji Suzuki, Kazunori Kanemaru, Kuniaki Ishii, Masamichi Ohkura, Yohei Okubo, Masamitsu Iino

Imaging intraorganellar Ca2+ at subcellular resolution using CEPIA

Nature Communications 5:4153, 2014 doi: 10.1038/ncomms5153. Abstract

 

ミトコンドリア・小胞体内におけるカルシウムイオン濃度の変動(カルシウムシグナル)を可視化する蛍光タンパク質型カルシウムセンサー(CEPIA)の開発に成功しました。

これにより、ミトコンドリア・小胞体内カルシウムシグナルを、時間的・空間的に高い解像度で観察することが可能になりました。

細胞の生理機能および病理に対し、ミトコンドリア・小胞体内カルシウムシグナルが果たす役割を解明する上で、新規センサーが新しい展望をもたらすことが期待されます。

グリア細胞が脳傷害から神経を守るカルシウム機構の解明(PNAS)

Kazunori Kanemaru, Jun Kubota, Hiroshi Sekiya, Kenzo Hirose, Yohei Okubo, Masamitsu Iino

Calcium-dependent N-cadherin upregulation mediates reactive astrogliosis and neuroprotection after brain injury

Proc Natl Acad Sci USA 110, 11612-11617, 2013. PubMed

 脳内において神経細胞を取り囲むように存在するグリア細胞は、その数が神経細胞を凌ぎます。通常、グリア細胞は神経細胞の信号伝達をサポートすると考えられています。しかし、てんかんや脳梗塞などの脳疾患、あるいは脳挫傷などの外傷により脳がダメージを受けると、グリア細胞は「通常型」から「病態型」へと姿を変えて神経細胞を保護する機能を獲得します。このような変化が起こるメカニズムには不明な点が多く残されていますが、私たちは、そのメカニズムの一端を明らかにしました。グリア細胞内のカルシウム濃度の変化が、通常型から病態型への変化と神経細胞を保護する作用を獲得するために重要であることが分かりました。

 本研究では、損傷した脳組織周辺のグリア細胞において細胞内カルシウム濃度が上昇することに着目し、グリア細胞内のカルシウム濃度の変化とグリア細胞の通常型から病態型への変化との関係を調べました。その結果、カルシウム濃度の変化が、ある種のタンパク質の合成を加速させることで病態型への変化を制御していることがわかりました。本研究は、グリア細胞内のカルシウム濃度の変化が、脳損傷の治癒過程に貢献することを初めて示しただけではなく、脳疾患の新規治療法の開発につながる可能性を秘めた重要な知見です。

脳における一酸化窒素(NO)シグナルの新機能(EMBO J.)

Sho Kakizawa, Toshiko Yamazawa, Yili Chen, Akihiro Ito, Takashi Murayama, Hideto Oyamada, Nagomi Kurebayashi, Osamu Sato, Masahiko Watanabe, Nozomu Mori, Katsuji Oguchi, Takashi Sakurai, Hiroshi Takeshima, Nobuhito Saito and Masamitsu Iino

Nitric oxide-induced calcium release via ryanodine receptors regulates neuronal function

EMBO J. 31, 417-428, 2012. PubMed

 一酸化窒素(NO)とカルシウムイオン(Ca2+)は、ともに極めて重要なシグナル分子です。私たちは、NOが中枢神経細胞でCa2+動員を起こすという新たなメカニズムを発見し、これが脳機能の制御に関与することを明らかにしました。

 私たちは、NOがCa2+放出チャネルのリアノジン受容体の特定のシステイン残基をS-ニトロシル化して活性化し、Ca2+ストアからCa2+放出を起こす事を明らかにしました。しかも、小脳皮質において平行線維の生理的な刺激パターンによって生じるNO濃度で、隣接するプルキンエ細胞内でリアノジン受容体を介するCa2+放出が起こることも明らかになりました。さらに、このプルキンエ細胞内のCa2+放出により、平行線維→プルキンエ細胞シナプスが可塑的に強められること(長期増強)も明らかになりました。

 加えて、病態生理学的な意義も明らかになりました。脳の血流が低下すると神経細胞からNOが産生され、神経細胞死を起こします。これは、脳梗塞などにおける神経細胞死の主要な原因とされています。私たちは、NOによるCa2+放出機構が神経細胞死に関わることを明らかにしました(下図)。興味深いことに、NOによるCa2+放出を抑制する薬物(ダントロレン)は、脳虚血モデルマウスで脳梗塞を軽減します。

 今回の新知見は、NOによる脳機能制御の基本的な理解を深めるとともに、神経細胞死を伴う病態に対する新たな治療戦略の基盤となり得ると期待できます。